広川町(ひろがわちょう)の偉人・濱口梧陵(はまぐち・ごりょう)の「稲むらの火」の逸話をもとに、国連が毎年11月5日を「世界津波の日」に制定して10周年を迎えたことを記念するシンポジウムが、きょう(11月21日)和歌山市の県民文化会館・小ホールで開かれました。これは、和歌山県と広川町が主催して開いたもので、およそ300人が参加しました。
.jpg)
はじめに、防災教育研究センター長を務める拓殖大学の濱口和久(はまぐち・かずひさ)特任教授が『「稲むらの火」に学ぶ、命を守るタイムリミット』と題して基調講演しました。

この中で濱口特任教授は「津波が沖合に見えてから避難しはじめるのではもう遅い。津波に関する間違った知識を改めなければならない」と訴えました。
具体的には「“津波の前に強い地震が来る”という通説は、明治の三陸地震津波では、さほど強くない地震のあと大津波が襲い、2万1千人が犠牲になったので、間違いだ。“津波の前には引き潮がある”という通説も、東日本大震災の時は引き潮がなく、大津波がやってきたので、これも間違い。“地震から津波までしばらく時間がある”というのも、北海道南西沖地震で、奥尻島(おくしりとう)でほんの数分後に大津波が襲ってきたので、そうとも言い切れない」と指摘しました。
さらに「歴史の教科書で戦争による犠牲者数は掲載されているのに、同規模の犠牲が出た明治の三陸地震は掲載されていない。これでは風化による災害への油断を生み、津波避難の意識が高まらない」と警鐘を鳴らし、この機会に改めて、濱口梧陵の功績を再評価し、津波の発生確率の高い低いに関わらず、“他人事ではなく自分事”として、南海トラフ巨大地震への備えを強く訴えました。
このあと、パネルディスカッションも行われ、京都大学防災研究所の副所長を務める矢守克也(やもり・かつや)教授や、広川町の「稲むらの火の館」の雑賀聰(さいか・さとし)館長、和歌山県の中村吉良(なかむら・よしろう)危機管理部長、それに、2018年の「世界津波の日・高校生サミット」で議長を務めた伊森安美(いもり・あみ)さんが、 津波防災の重要性について意見を交換しました。