高校で学ぶ化学の知識が、社会でどのように役立てられているかを、警察の化学捜査の側面から高校生に学んでもらおうという出張授業がこのほど(7/19)、和歌山市の県立向陽高校で行われ、元科学捜査研究所研究員の近畿大学生物理工学部教授が教壇に立ちました。

向陽高校に出向いて授業を行ったのは、近畿大学生物理工学部の財津桂(ざいつ・けい)教授で、かつては大阪府警察本部の科学捜査研究所に勤務し、短時間で危険ドラッグを識別できる手法を開発した経緯があり、その後、名古屋大学で准教授を務め、今年(2022年)4月から近畿大学で教鞭をとっています。
今回の出張授業は、財津教授が講師となり、向陽高校・環境科学科の2年生を対象に行われ、この日は、およそ80人が授業を受けました。
授業では、財津教授が、「分子をイオン化することで物質の質量を特定する『質量分析』という、皆さんが高校で習っているこの手法を使えば、体内に摂取した物質や薬物を自由に調べられる」と説明した上で、睡眠薬を飲まされて意識を失った女性が現金などを盗まれたというこん睡強盗事件を前提に、事件として立件できるかどうかを検討しました。

そして、生徒から示された「被害者の尿から反応が出たとしても、普段から飲んでいる睡眠薬の反応かもしれない」といった意見に対し、財津教授は、すべての意見を認めた上で、「薬物捜査では、尿から薬物を検出できるタイムリミットなど、薬物が体の中でどのように変化するかをよく把握する必要があり、事件の概要と分析結果を照らし合わせて違和感がないかを確かめることが重要」と指摘しました。
池尻亘輝(いけじり・こうき)さん16歳は、「いま学校で習っていることが社会の役に立っていることを知り驚いた。将来、どんな職業につくかはわからないが、そういう時に役に立つかもしれないので、もっと化学を勉強していきたい」と話していました。


財津教授は、「生徒の皆さんのレベルは高く、とても意欲的に取り組んでくれたので、やっていて楽しかったです。少しでも化学などの分野に興味をもってもらいたいし、基礎の部分を伸ばせるような授業をしたいので、今後は、高校に限らず、小中学校でも、こうした授業を行いたい」と話していました。
近畿大学生物理工学部では、さまざまな分野の教員が、県内の高校に出向いて、出張授業を行っています。